ベン・タナカの展望を聞く:GTTが生まれるまで


リクルートの仕事以外に、教育を始められた経緯は? BT:この7〜8年、クライアントからグローバル人財を欲しいという依頼があっても、10の依頼に対して2人しか該当する人財がいないのです。そこで、これは人財を育てるしかないなと思ったのがきっかけです。以前からやっていた会社立て直しのコンサルティングで一番やっかいだったのは、その依頼された会社に、人財がいないことでした。経営がうまく行っていない会社は、間違いなくよい人財がいないんですね。その人財を教育することで、会社を立て直しするのが私の手法なので、もともと人財を作るのは得意だったんです。ノウハウもありますし。

そこから新しいアイデアがひらめいたのですね。 BT:二つの要素が絡み合って、このアイデアが生まれました。一つはイギリス特有の文化に着目したこと、もう一つは、私自身が長年温めてきた人財教育ノウハウを内部だけでなく外部にも公開する、という側面です。もう三十年以上、イギリスに住んでいますが、住宅事情が日本とは全く違いますね。日本では不動産は買って、土地が値上がりするのを待って売ることで利益を出します。ところがイギリスでは古い家に価値があることも手伝って、もっと賢く利用します。古くて安い家を買って、リノベートする、つまり、内装をよくしたり、デザインし直し超モダンにしたりする。値上がりするまで待たずに、不動産の付加価値をあげて利益を出すのです。3ベッドの家だったら、屋根裏を改造して4ベッドの家にする。広い庭があれば一角に書斎を作る。この付加価値をつける不動産投資のやり方を見て、コレだ!と思いました。

リクルート会社のサービスとどのような関係があるのですか? BT:3ベッドの価値だった人財に、付加価値をつけて4ベッドの価値にして紹介するのです。つまり人財をトレーニングして、もっと仕事ができる人財としてクライアントに紹介するということです。スキルアップするわけですから、給料も上がりますので求職者も嬉しいし、クライアントもいい人財が見つかって嬉しい、我々も報酬が増えて嬉しい。みんながハッピーになれる仕組みです。実は私自身、若い頃は教師になろうと思っていたほど教育には非常に興味があり、リクルート会社で人財トレーニングをするというアイデアは、私の長年のノウハウを活用できる場でもあります。このトレーニングのノウハウを発展、体系化し、「グローバル・タレント育成プログラム(GTTプログラム)」を立ち上げました。

GTTについて、もっと詳しく教えてください。 BT:経験の浅い、若い人財を、実践を通してこれからのグローバル社会に通用する人財に育てていくプログラムです。企業にとっては、実際にグローバルに仕事のできる人を見分ける基準となる世界初の評価システムでもあります。一方、求職者はこのGTT評価システムで、自分がグローバル人財としてどのくらいのレベルなのかが分かるようになります。人財総合サービス会社である我々は手元のデータとともにGTTを使って「このレベルの人は、このくらいの年収になります」と評価することができます。これは大きな強みですね。

人財評価の基準になるプログラムということですね。 BT:トレーニングを受ける人も、このくらい自分に投資すると、どのくらいの収入になるのか、どのレベルに到達すると、いくら収入が増えるのかなどが分かる。そうすると、よし!じゃ、一つがんばってみようという気にもなります。そこで我々は今、このGTT評価システムを世界中に広げようとしています。GTTプログラムの大きな特徴として、「体験型学習」ということが挙げられます。従来の試験対応型の勉強法は採用していません。例えば英語能力テストの日本英語検定、TOEICやTOEFLなどで高評価、高得点を取っている人が、必ずしも仕事の現場で即戦力になるわけではないことは、これまでのデータ分析、リサーチで分かっていますし、企業の皆さんもすでに気づいておられるのではないでしょうか。GTTプログラムでは実際の仕事の現場で必要なことを、体験トレーニングとして身につけていくので、企業の皆さんに即戦力としてご紹介できることが大きな特徴です。

近年は日本の企業でも経験者の採用が多いという話はよく聞きます。 BT:新卒者にチャンスを与えるのが、GTTプログラムです。そしてWAT(Work Ability Test)によるGTT評価システムで、人材のグローバル・スキル・レベルを目に見える形でクリアに評価するので、世界の評価スタンダードとして採用していただくことが可能です。また「このレベルの人はこのくらいの仕事ができて、どのくらいの年収になる」という世界基準ができるので、求職者にとってはモチベーションにつながり、企業にとっては人材の実践力レベルが目に見える形で分かるわけですから、採用の基準になります。このようにGTTプログラムは双方にとって非常に大きな意義があるのです。

具体的なプログラム内容は? BT:基本は、「Perfect 30」と呼ばれる60時間のアイテム受講です。GTTの中で使われている技術の一つに、私が開発した「SQL:スーパー・クイック・ラーニング」があります。これはもともと、ほとんど英語を話せない人が、中学生レベルの英語知識があれば一週間でビジネス英会話ができるようになるという驚異的なスピードを誇る教育メソッドです。日本の学生が受ける学校の授業というのは、たいてい生徒が先生の話を一方的に聞くだけの講義の形をとっています。この従来型の教育とSQLの決定的な違いは、「体験」にあります。GTTでは授業を聞くというよりも、実際に体験して身につけることが基本であり、これはコミュニケーションにおいて言葉以外の要素が大きく影響しているという研究結果を基に開発されています。

言葉以外の要素が大きく影響しているとは、どういうことですか? BT:人と人とのコミュニケーションを成り立たせている100パーセントの要素のうち、言葉が占めるのはたったの7パーセントで、残り93パーセントはボディー・ランゲージ(55パーセント)と声のトーン(38パーセント)が占めているという研究結果があるのです。実際、言葉だけの授業よりも、それを自分で実践してみるほうが、覚えが早いでしょう? 自然に皆さんが実感していることです。GTTプログラムは、これに私独自の手法を加味して、トレーニングに取り入れているのです。

GTTを修了したら、どうなるのですか? BT:GTTプログラムを受講し、それぞれのスキルを身につけたと我々が判断した人には、各レベルのサティフィケート(WAT修了証明書)を発行します。就職活動の際に企業にこのサティフィケートを提示すると、企業はその求職者がどのレベルで、どのようなスキルを身につけているかを客観的に判断することができるようになっていますので、企業への就職も有利になります。

認証制というのは企業にとっては願ってもないシステムですね。 BT:GTTプログラムは、世界が必要とするグローバル人財を育て、企業と求職者の両者に有意義に機能していくでしょう。当社ロンドン本社ではすでにGTTプログラムの第四期生を輩出しています。今後は大阪、東京、台北、大連、ソウルでも同プログラムを積極的に展開していく予定です。興味ある方はぜひお問い合わせください。

T. BEN TANAKA ベン・タナカ経歴

T. BEN TANAKA ベン・タナカ経歴

CEO/Managing Director



青山学院大学理工学部物理科卒業後、欧州に留学。帰国後、化学品メーカー研究室勤務、商社での貿易ビジネスを経験後、80年代にベンチャー企業として一世を風靡したソード株式会社(世界初のパソコンを1970年に発売)に入社。その海外事業の責任者として、世界32ヵ国にてビジネスを展開、1980年欧州統括責任者として英国赴任。英国における外資系企業勤務、日本や欧州での経営経験を活かし、経営コンサルタントとして独立、数々の企業再建に携わる。主なクライアントにワング、DEC、シーメンス, 野村證券, 野村総研、英国地方政府など。2007年から英国を拠点としたパソナ・ヨーロッパ社長。2008年に同社の株式を取得し、同年パーフェクト・エンプロイメントを設立。CEOとして会社経営の傍ら、ビジネスマンの能力開発やモチベーション向上のメソッドを伝えるセミナーを日本、英国、台湾、中国にて多数開催している。